る者あり、或は白木《しらき》の指物細工《さしものざいく》に漆《うるし》を塗《ぬり》てその品位を増す者あり、或は戸《と》障子《しょうじ》等を作《つくっ》て本職の大工《だいく》と巧拙《こうせつ》を争う者あり、しかのみならず、近年に至《いたり》ては手業《てわざ》の外に商売を兼ね、船を造り荷物を仕入れて大阪に渡海《とかい》せしむる者あり、或は自《みず》からその船に乗る者あり。
もとより下士の輩《はい》、悉皆《しっかい》商工に従事するには非ざれども、その一部分に行わるれば仲間中《なかまうち》の資本は間接に働《はたらき》をなして、些細《ささい》の余財もいたずらに嚢底《のうてい》に隠るることなく、金の流通|忙《いそが》わしくして利潤《りじゅん》もまた少なからず。藩中に商業行わるれば上士もこれを傍観《ぼうかん》するに非ず、往々《おうおう》竊《ひそか》に資本を卸《おろ》す者ありといえども、如何《いかん》せん生来の教育、算筆《さんひつ》に疎《うと》くして理財の真情を知らざるが故に、下士に依頼《いらい》して商法を行うも、空《むな》しく資本を失うか、しからざればわずかに利潤の糟粕《そうはく》を嘗《なむ》るの
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