ふっとう》したれども、その首魁《しゅかい》たる者二、三名の家禄《かろく》を没入し、これを藩地外に放逐《ほうちく》して鎮静《ちんせい》を致したり。
これ等《ら》の事情を以て、下士の輩《はい》は満腹《まんぷく》、常に不平なれども、かつてこの不平を洩《もら》すべき機会を得ず。その仲間《なかま》の中にも往々《おうおう》才力に富み品行|賤《いや》しからざる者なきに非ざれども、かかる人物は、必ず会計書記等の俗役に採用せらるるが故に、一身の利害に忙《いそが》わしくして、同類一般の事を顧《かえりみ》るに遑《いとま》あらず。非役《ひやく》の輩《はい》は固《もと》より智力もなく、かつ生計の内職に役《えき》せられて、衣食以上のことに心を関するを得ずして日一日《ひいちにち》を送りしことなるが、二、三十年以来、下士の内職なるもの漸《ようや》く繁盛《はんじょう》を致し、最前《さいぜん》はただ杉《すぎ》檜《ひのき》の指物《さしもの》膳箱《ぜんばこ》などを製し、元結《もとゆい》の紙糸《かみいと》を捻《よ》る等に過ぎざりしもの、次第にその仕事の種類を増し、下駄《げた》傘《からかさ》を作る者あり、提灯《ちょうちん》を張
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