改革とて、藩士一般に倹約《けんやく》を命ずることあり。この時、衣服の制限を立《たつ》るに、何の身分は綿服《めんぷく》、何は紬《つむぎ》まで、何は羽二重《はぶたえ》を許すなどと命《めい》を出《いだ》すゆえ、その命令は一藩経済のため歟《か》、衣冠制度《いかんせいど》のため歟、両様混雑して分明ならず。恰《あたか》も倹約の幸便《こうびん》に格式《かくしき》りきみをするがごとくにして、綿服の者は常に不平を抱《いだ》き、到底《とうてい》倹約の永久したることなし。
また今を去ること三十余年、固《かた》め番《ばん》とて非役《ひやく》の徒士《かち》に城門の番を命じたることあり。この門番は旧来|足軽《あしがる》の職分たりしを、要路の者の考に、足軽は煩務《はんむ》にして徒士は無事なるゆえ、これを代用すべしといい、この考と、また一方には上士《じょうし》と下士《かし》との分界をなお明《あきらか》にして下士の首を押《おさ》えんとの考を交え、その実《じつ》はこれがため費用を省くにもあらず、武備を盛《さかん》にするにもあらず、ただ一事無益の好事《こうず》を企《くわだ》てたるのみ。この一条については下士の議論|沸騰《
前へ
次へ
全42ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
福沢 諭吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング