って改め、無辜《むこ》の人民は身の進退を貸して他の草紙に供するが如きことあらん。国のために大なる害なり。あるいはこれを捨てて用いざらんか、怨望《えんぼう》満野《まんや》、建白の門は市《いち》の如く、新聞紙の面は裏店《うらだな》の井戸端の如く、その煩《わずら》わしきや衝《つ》くが如く、その面倒なるや刺すが如く、あたかも無数の小姑《こじゅうとめ》が一人の家嫂《よめ》を窘《くるしむ》るに異ならず。いかなる政府も、これに堪ゆること能わざるにいたらん。これに堪えずして手を出だせば、ついに双方の気配を損じ、国内に不和を生ずることあらん。また国のために害ありというべし。左にその一例をしめさん。
今の民権論者は、しきりに政府に向いて不平を訴うるが如くなるは何ぞや。政府は、果して論者と思想の元素を殊《こと》にして、その方向まったく相反するものか。政府は、前にいえる廃藩置県以下の諸件を慊《こころよし》とせずして、論者の持張《じちょう》する改進の旨とまったく相戻《あいもと》るものか。あるいはかりに政府をして改進を悦ばざるものとするも、この事物の変革、人心の騒乱に際して、政府のみひとりその方向を別にするを得
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