べきか。余輩決してこれを信ぜず。論者といえどもまた然らん。政府は人事変革の原因に非ずして人心変革の結果なりとのことは、前《ぜん》すでにこれを述べて、論者もこれに同意したることならん。
然らばすなわち論者が不平を訴うるところは、事の元素にあらずしてその枝葉にあり、政府の精神にあらずしてその外形にあること、明らかに知るべし。この枝葉・外形の事よりして双方の間に不和を生じ、改進の一元素中に意外の変を起すは、国のためにもっとも悲しむべき事ならずや。すなわち、編首にいわゆる直接のために眼光を掩《おお》われて地位の利害に眩《げん》するものなり。
たとえば新聞記者の禁獄の如し。その罰の当否はしばらく擱《さしお》き、とにかくに日本国において、学者と名づくる人物が獄屋に入りたるという事柄は、決して美談に非ず。窃盗博徒といえども、これを捕縛してもらさざるは、法律上において称すべき事なれども、その囚徒が獄内に充満するは、祝すべきに非ず。窃盗博徒、なおかつ然り、いわんや字を知る文人学者においてをや。国のためにもっとも悲しむべき事なり。この一段にいたりては、政府の人においても、学者の仲間においても、いやしく
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