間|窒塞《ちっそく》せしが如し。天下一般の大損亡というべし。先にこの開成所をして平人《へいじん》私有の学校ならしめなば、必ずかかる災害はなかるべきはずなり。官学校の失、五なり。[#ここから割り注]諸藩士執行中、藩用にて急に帰国を命ぜられ、国に帰りて見れば、さしたる用も無くして、また再遊、したがって再遊、したがって帰国、金ばかり費やしてついに学問のできざる者多し。退きてその本を尋ぬれば、その金も日本の金なり。その人も日本の人なり。日本の人にして日本の金を費し、かえって日本のために益をなさざるは何ぞや。その失策の源、他にあらず、ただ官途の範囲に文学を籠絡せんとするの弊なり。[#ここで割り注終わり]
一、私立の塾には元金《もときん》少なくして、書籍器械を買い塾舎を建つる方便なし。その失、一なり。
一、古来、日本にて学者士君子、銭《ぜに》を取りて人に教うるを恥とし、その風をなせるがゆえに、私塾にて些少《さしょう》の受教料を取るも大いに人の耳目を驚かす。かつ大志を抱くものは往々貧家の子に多きものなれども、衣食にも差支うるほどにて、とても受教の金を払うべき方便なく、ついに空く志を挫《くじ》く者多し
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