して官の事業を探索する等、無用の時を費《ついや》して本業を忘るるにいたる。その失、二なり。
一、官の学校にては、おのずから衣冠の階級あるがゆえに、正《ただ》しく学業の深浅にしたがって生徒席順の甲乙を定め難き場合あり。この弊を除くの一事は、議論上には容易なれども、事実に行われざるものなり。その失、三なり。
一、官の学校にある者は、みずからその学識を測量せずして、にわかに仕官に志すの弊あり。けだしその達路《たつろ》近ければなり。その失、四なり。
一、官の学校は、官とその盛衰をともにして、官に変あれば校にも変を生じ、官、斃《たおる》れば校もまた斃る。はなはだしきは官府|一《いち》吏人《りじん》の進退を見て、学校の栄枯を卜《ぼく》するにいたることあり。近くその一例をあげていわんに、旧幕府のとき開成所を設けたれども、まったく官府の管轄を蒙り、官の私有に異ならざりしがゆえ、いったん幕府の瓦解にいたり捨ててかえりみる者なし。幸にして今日に及びようやく旧に復するの模様あれども、空しく二年の時日を失い、生徒分散、家屋荒廃、書籍を失い器械を毀《こぼ》ち、その零落、名状するに堪えず。あたかも文学の気は二年の
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