書もはなはだ乏しければ、国内一般に風化を及ぼすは、三、五年の事業にあらず、ただ人力をつくして時を待つのみ。
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一、学校を設くるに公私両用の別あり。その得失、左の如し。
一、官に学校を立つれば、金穀《きんこく》に差支えなくして、書籍器械の買入はもちろん、教師へも十分に給料をあたうべきがゆえに、教師も安んじて業につき、貧書生も学費を省《はぶ》き、書籍に不自由なし。その得、一なり。
一、官には黜陟《ちゅっちょく》・与奪《よだつ》の権あるゆえ、学校の法を厳にし、賞罰を明らかにすべし。その得、二なり。
一、官の学校は自《おのず》から仕官の途《みち》に近し。ゆえに青雲の志ある者は、ことに勉強することあり。その得、三なり。
一、官の学校には、教師の外《ほか》に俗吏の員、必ず多く、官の財を取扱うこと、あるいは深切ならずして、費冗《ひじょう》はなはだ多し。この金を私学校に用いなば、およそ四倍の実用をなすべし。その失、一なり。
一、官の学校にある者は、親しく政府の挙動を聞見して、みだりにその是非を論ずるの弊あり。はなはだしきは権家に出入
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