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●昭和二十年十一月二十四日 八幡村より 松戸市 永井善次郎宛
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 御手紙拝見。長篇を書いてゐるのですか、それは前から、プランされてゐるものでせうね。僕もそろそろ長篇を手がけたいと思ひますがまだプランは建ててゐません。光太が詩の雑誌を来秋あたりからやりたいと云つてゐますが現在のところ組代など大変なものでせうね、一度逢つて印刷のことなどお訊ねしたいと思つて居ります。先日熊平兄弟を訪ねました、二人とも健在、木下も助かつて居ました。音楽学校の先生をしてゐた岡田二郎君は死亡しました。
 雑誌の原稿、十二月二十日が締切だと少し急だと思ひますが出来たら御送り致しませう。原子爆弾のことはあの直後早速書き上げてみましたが、読返してみるとどうも意に満たないのでこれはもつと整理してから発表したいと思ひます。
 ここへ美樹が疏[#「疏」に「(ママ)」の注記]開させておいたトルストイ全集があるので時折ひらいてみてゐますが、「饉餓に関する論文」などに興味をひかれ勝ちです。トルストイも研究するとなれば大変なしろものですね。
「冬の日」で光彩を放つ
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