元気の様子何よりと存じます。先日帰郷の際は何彼と御世話になり有難く御礼申上げます。とても大変な汽車でしたが拵へていただいた弁当がおいしかつたので助かりました。その後こちらではあんなおいしいものは食べられません。寒いのでとかく縮こまつてゐますが東京の街もインフレで憂鬱なことです。
扨て着物の件いろいろ御配慮にあずかり済みませんでした。私にも見当がつきませんからまあ適当な値段で処理して下さい。何分早い方が結構なのですから。
増岡登三郎氏のことについては、美樹君に先便で申上ましたが、まああんな人なのですから仕方がないでせう。荷物は先方から発送してくれることと思います。それにしても早く美樹君の宿が見つかるといいのですが。
先日も永井君が逗子の方へ探してやるとは云つてゐましたが、住宅難はなかなか深刻です。
新新円が出るといふ噂も御座いますが、何が飛び出してくるやら全く日本の前途は暗澹としてゐます。
寒さの折、御大切に。皆さんによろしく御伝へ下さい。
姉上様[#地から3字上げ]二月七日 民喜
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●昭和二十二年三月二十九日 大森区馬込末
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