田方より 広島市幟町 原すみ江宛
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御手紙有難うございました。みなさん元気で結構なことと存じます。大分陽気も暖かになりましたから広島も賑やかになつてゆくことでせう。東京も人足ばかりはぞろぞろしてゐますが、闇市の闇の物凄いことに胆を抜かれさうです。茂君も上京したさうですが、まだこちらへは姿を見せませんが、いづれ立寄ることでせう。美樹君も下宿がなくていらいらしてゐることでせう。私の考では増岡増造さんに当座の宿をたのんでみてはどうかしらと思ひます。
煙草はまた高くなるし、銭湯へも滅多に行けずやねこいことばつかしです。
姉上様[#地から3字上げ]民喜
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●昭和二十二年八月十五日 東京都中野区打越十三より 広島市幟町 原美樹宛
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暑いね、今年は少し暑すぎるやうだ。広島も暑いことだらう。この頃こちらは停電と断水が毎日つづき水も思ふやうには飲めないが阿佐谷の家鴨ばかりは、のん気さうに啼いてゐる。先日ウイスキーの配給があつたので、飲んだら久振りに酔つた。
暑いからこれで失敬。
凸版印刷が争議
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