−57]中で間断なく働いてるものは血と頭丈けです。ね、貴方は私が毎日壁を熟視《みつ》め乍ら怩つと考へてる姿を考へられるでせう。ほんとに私は考の中に埋つて居ますの。そして考へ出しても私は法官の前で云つた私の考の何処にも否点を見出しません。私はほんとに小さい愛情の虜にならずに了つた事を考へて居ます。
私達は私達の今出来る丈けの働きをして居ますのね。二人はほんとに働く事が休息の様に働ける丈け働いて居ますはね。それでも私達はよく食べる物がなくなりました。一日に一度外切餅が食べられない日もありました。暑くなつても薄い着物がなくて仕方がないので貴方が一日裸体で床《とこ》へ這入つて被入る間に大急ぎで洗つて張つて縫ひ直した事があつたでせう。夜半までかゝつてね。私と貴方なら怎んなにしても生きられますはね。然し私は勝手に産んだ児に迄恁那生活を強ひる権利はありません。思想上からだつてさうです。私の廻りには大勢のお母さんと大勢のお父さんが居るでせう。私は其中の一人にも満足して居ません。私は彼等の様に凡ての点に貧弱で児に見《まみ》える度強を持して居ませんもの。と云つて私は一度も私も両親に不平や不満を抱いたこと
前へ
次へ
全14ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
原田 皐月 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング