はありませんけど、それは児の方の側の事で親の云云する事ではありません。親は親として満足出来なければ親にならない外、外に道がありませんもの。然も私は親になりかけた時に気が付いたのです。随分々々迂遠な事でした。然し親になつて了つてからでなかつたのがまだしのもの幸でした。
法官は虚無党以上の危険思想だと云ひました。
「実に恐ろしい。実に危険だ。罪悪以上だ」
と云ひました。私の身は怎うなるか分りません。法官は「人類の滅亡だ」と云ふ事を繰返しました。そして「其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]思想を口実にして他に之れを見做《みなら》ふものがあつたら罪悪は罪悪を産むではないか」と云ひました。人間が自分の問題を考究する時人類だの他人だのと考を散慢に拡げて居られるものと思つて居るのでせうか。私は即坐に
「人の事は人の事です。人類があつてから私があるのではありません」
と打突ける様に云ひましたの。そしたら
「それでは何処までも犯罪だと云ふ事を知らないで行つたと云ふのか」
斯んな愚にも付かない尋問をするのです。私は「刑法と善悪とは別問題です。然し刑法に触
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