だ、設けた、親にある筈です。其期間親は当然凡ての責任を持ち得なければなりません。さう考へて来て私は私の責任観念を果すには恁うする外に道がなかつたのです。これが私として採るべき唯一の道だと思つたのです。只それ丈けでした。其外何にも考へませんでした」
 私はこんな意味の事を云ひましたの。一生懸命でね。判つて貰はなくともいゝから云ふ丈けは云はうと思ひましてね。云つて了つたら私の目から又無暗に涙が流れました。貴方にお話した時も私は矢鱈と泣きましたね。自分の口へまだ出て来ない言葉に先から感激して涙の方が先に出て来た様な風にね。今度もさうなんです。私は語を切ると涙がはら/\と落ちましたの。悲しい涙でも口惜しい涙でもそんな意味のある涙ではないのです。私の声の一ツ/\の響が涙管を震はして涙の玉を振り落す様に只々はら/\こぼれるんですの。其時私は
「実に怖ろしいツ」
 と云ふ法官の声を聞きました。
 私は一日中変化と云つては殆ど三度の食事を運ばれる時丈けです。あとは終日灰色の世界でこの時間と次ぎの時間の区別のつかない時の中にゐます。其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94
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