――丈けを親が引出し育てて遣らなければならない責任があるのですから。然も必ず過まる事なしに引出し育てなければならないのですから非常な責任を感じないわけには参りませんのです。間違つたら遣り直せばいゝと云ふ事は自分の外用ひられない言葉ですもの」
斯う云つて私は決して軽卒や自分勝手でない事も説きましたの。私は貴方とも口を聞かずに幾日も幾日も考へて居ましたでせう。それを皆話しましたの。
「兎に角自分が不用意の為に斯うなつたのだから、姙娠して了つたのだから、私の出来る丈けの努力を生れる子に尽さう。それで足りない処は仕外のない事だから我慢して貰ふ。兎に角私は私の出来る丈けの力を産れる児に向ければいゝのだ」
私が姙娠を知つた始めに斯う思つた事も話しましたの。すると法官はそれが正しいと云はぬ許りに幾度も幾度も合黙《うなづ》きました。けれど私が又話を進めなかつた時はもう其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]気色は見えませんでした。
三
私は斯う云ひましたの。
「始めはさう決心したのですけど、もう一歩考を進めた時、それは私には都合がいゝが産れて
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