海岸通りに出ると、チッチッと舌を鳴らして行く船員の群が多かった。
船乗りは意気で勇ましくていゝなあ――
私は商人宿とかいてある行灯をみつけると、ジンと耳を熱くしながら、宿代を聞きにはいった。
親切そうなお上さんが、帳場にいて、泊りだけなら六十銭でいゝと、旅心をいたわるように「おあがりやす」と云ってくれた。
三畳の壁の青いのが、変に淋しかったが、朝からの浴衣を着物にきかえると、宿のお上さんに教わって、近所の銭湯に行った。
旅と云うものはおそろしいようで、肩のはらないもの。
女達は、まるで蓮の花のように小さい湯舟を囲んで、珍らしい言葉でしゃべっている。
旅の銭湯にはいって、元気な顔をしているが、あの青い壁に押されて寝る今夜の夢を思うと、私はふっと悲しくなった。
七月×日
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坊さん簪買ふたと云うた……
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窓の下を人夫達が土佐節を唄いながら通って行く。
ランマンと吹く風に、波のように蚊屋が吹きあげて、まことに楽しみな朝の寝ざめ、郷愁をおびた土佐節を聞いていると、高松のあの港が恋いしくなった。
私の思い出に何の汚れもない
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