放浪記(初出)
林芙美子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)三白草《どくだみ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)木賃|宿街《ホテルガイ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「穴かんむり/樔のつくり」、第4水準2−83−21]
[#…]:返り点
(例)楊柳斉作[#レ]花
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ごろ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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秋が来たんだ
十月×日
一尺四方の四角な天窓を眺めて、始めて紫色に澄んだ空を見た。
秋が来たんだ。コック部屋で御飯を食べながら私は遠い田舎の秋をどんなにか恋しく懐しく思った。
秋はいゝな……。
今日も一人の女が来た。マシマロのように白っぽい一寸面白そうな女。厭になってしまう、なぜか人が恋いしい。
そのくせ、どの客の顔も一つの商品に見えて、どの客の顔も疲れている。なんでもいゝ私は雑誌を読む真似をして、じっと色ん
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