ゃろ、こっちゃいおはいりな……。」
 噴水の横の鳩の豆を売るお婆さんが、豚小屋のような店から声をかけてくれた。
 私は人なつっこい笑顔で、お婆さんの親切に報いるべく、頭のつかえそうな、アンペラ張りの店へはいって行った。
 文字通り、それは小屋で、バスケットに腰をかけると、豆くさいけれど、それでも涼しかった。
 ふやけた大豆が石油鑵の中につけてあった。
 ガラスの蓋をした二ツの箱には、おみくじや、固い昆布がはいっていて、いっぱいほこりをかぶっていた。
「お婆さん、その豆一皿ください。」
 五銭の白銅を置くと、しなびた手でお婆さんは私の手をはらった。
「ぜゞなぞほっとき。」
 此お婆さんにいくつ[#「いくつ」に傍点]ですと聞くと、七十六だと云った。
 虫の食ったおヒナ様のようにしおらしい。
「東京はもう地震はなおりましたかいな。」
 歯のないお婆さんはきんちゃく[#「きんちゃく」に傍点]をしぼったような口をして、優さしい表情をする。
「お婆さんお上り。」
 私がバスケットから、お弁当を出すと、お婆さんはニコニコして、玉子焼きを口にふくらます。

「お婆あはん、暑うおまんなあ。」
 お婆さん
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