年の男が、私にアンパンと茶をすゝめながら、私の佗しい姿を見た。
「別に国と云って定まったところはありませんけれど、原籍は鹿児島県東桜島です。」
「ホウ……随分遠いんですなあ……。」
 私はもうたまらなくなって、うまそうなアンパンを摘んで、一口噛むと、案外固くって、粉がボロボロ膝にこぼれ落ちていった。
 何もない。
 何も考える必要はない。
 私はつと立って神前に額ずくと、プイと下駄をはいて表へ出てしまった。
 パン屑が虫歯の洞穴の中で、ドンドンむれていってもいゝ。只口の中に味覚があればいゝのだ。
 家の前へ行くと、あの男と同じ様に固く玄関は口をつぐんでいる。
 私は壺井さんの家へ行くと、はろばろと足を投げ出して横になった。
「お宅に少しお米ありませんか?」
 人のいゝ壺井さんの妻君もへこたれて、私のそばに横になると、一握の米を茶碗に入れたのを持って、生きる事が厭になってしまったわと云う話になってしまった。
「たい子さんとこ、信州から米が来たって云ってたから、あそこへ行ってみましょう。」
「そりゃあ、えゝなあ……。」
 そばにいた伝治さんの妻君は両手を打って子供のように喜ぶ。真実いとしい
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