然たりか……。何と住みにくい浮世でござりましょう。
故郷より手紙来る。
――現金主義になって、自分の口すぎ位いはこっちに心配かけないでくれ、才と云うものに自惚れてはならない。お母さんも、大分衰えている。一度帰っておいで、お前のブラブラ主義には不賛成です。
五円の為替を膝において、おありがとうござります[#「おありがとうござります」に傍点]。
私はなさけなくなって、遠い古里へ舌を出した。
六月×日
前の屍室に、今夜は青い灯がついている。又兵隊さんが一人死んだ。
青い窓の灯を横ぎって、通夜する兵隊さんの影が、二ツぼんやりうつっている。
「あら! 蛍が飛んどる。」
井戸端で黒島さんの妻君が、ぼんやり空を見ている。
「ほんとう?」
寝そべっていた私も縁端に出てみたが、もう何も見えなかった。
夜。
隣の壺井夫婦、黒島夫婦遊びに来る。
壺井さん曰く、
――今日はとても面白かった。黒島君と二人で市場へ、盥を買いに行ったら、金もはらわないのに、三円いくらのつり銭とたらい[#「たらい」に傍点]をくれて一寸ドキッとしたね。
「まあ! それはうらやましい、たしか、クヌウト・ハ
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