煙管の頭でさすってくれた。
もうけ[#「もうけ」に傍点]話ばかりしているこんな人達の間にもこんな真心がある。
二月×日
「お前は七赤金星で金は金でも、金屏風の金だから小綺麗な仕事をしなけりゃ駄目だよ。」
よく母がこんな事を云っていたが、こんなお上品な仕事はじきに退屈してしまう。
あきっぽくって、気が小さくて、じき人にまいってしまって、わけもなくなじめない私のさが[#「さが」に傍点]の淋しさ……あゝ誰もいないところで、ワアッ! と叫びあがりたい程、焦々する。
いゝ詩をかこう。
元気な詩をかこう。
只一冊のワイルド・プロフォディスにも楽しみをかけて読む。
――私は灰色の十一月の雨の中を嘲けり笑うモッブにとり囲まれていた。
――獄中にある人々にとっては涙は日常の経験の一部分である。人が獄中にあって泣かない日は、その人の心が堅くなっている日で、その人の心が幸福である日ではない。
夜々の私の心はこんな文字を見ると、まことに痛んでしまう。
お友達よ! 肉親よ! 隣人よ! わけのわからない悲しみで正直に私は私を嘲笑うモッブが恋いしくなった。
お糸さんの恋愛にも祝福あれ!
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