される事はたまらないと思った。私は私を捨てゝ行った島の男の事が、急に思い出されると、こんなアパートの片隅で、私一人辛い思いをしている事が切なかった。
「何もしません。これは自分に言いきかせるものなのです。死んでもいゝつもりで話しに来たのです。」
あゝ私はいつも、松田さんの優さしい言葉には参ってしまう。
「どうにもならないんじゃありませんか、別れても、いつ帰えってくるかも知れないひと[#「ひと」に傍点]があるんです。それに私はとても変質者だから駄目ですの、お金も借りっぱなしでとても苦しく思っていますが、四五日すれば何とかしますから……。」
松田さんは立ちあがると、狂人のようにあわたゞしく梯子を降りて行ってしまった。
夜更け。
島の男の古い手紙を出して読む。
皆、之が嘘だったのかしら、アパートの頭のもげそうな風が吹く。
栓ずれば仏ならねどみな寂しか……。
三月×日
菜の花の金色が、硝子窓から、広い田舎の野原を思い出させてくれた。その花屋の横を折れると、××産園とペンキの看板がかゝっていた。何度も思いあきらめて、結局産婆にでもなってしまおうと思って。たずねて来た千駄木町の
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