い言葉をかけてあげようと思っても、こうして会うと、シャツの目立って白いのなんかとてもしゃく[#「しゃく」に傍点]だった。
「いつまでもお金かえせないで、本当にすまなく思っています。」
松田さんは酒にでも酔っているのか、わざとらしくつっぷしてゴブゴブ涙の息をしていた。
さくらあらいこ[#「さくらあらいこ」に傍点]の所へ行くの厭だけど、自分の好かない場違いの人の涙を見ている事が辛らくなったので、そっとドアのそばへ行く。
あゝ拾円と云う金が、こんなにも重苦しい涙を見なければならないのかしら、その拾円がみんな、ミシン屋の叔母さんのふところへ、はいって私には素通して行っただけの拾円だった。
セルロイド工場の事。
自殺したお千代さんの事。
ミシン屋の二畳でむかえた貧しい正月の事。
あゝみんなすぎてしまったのに、小さな男の涙姿を見ていると、同じような夢を見ている錯覚がおこる。
「今日は、どんなにしても話したい気持ちで来たんです。」
松田さんのふところには、剃刀のようなものがキラキラ見えた。
「誰が悪るいんです! 変なまねは止めて下さい。」
こんなところで、こんな好きでもない男に殺ろ
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