「私の父さん? さくらあらいこ[#「さくらあらいこ」に傍点]の社長よ。」
 だから私は石鹸よりも、このあらいこをもらう事が多い。
「ね、つまらないわね。私月謝がはらえないので、学校止してしまいたいのよ。」
 火鉢がないので、七輪に折り屑を燃やして炭をおこす。
「階下《した》の七号に越して来た女ね、時計屋さんの妾だって、お上さんがとてもチヤホヤしていて憎らしいたら……。」
 彼女の呼名はいくつもあるので判らないんだが、自分ではベニがねと云っていた。ベニのパパはハワイ[#「ハワイ」に傍点]に長い事行っていたとかで、ビール箱でこしらえた大きいベッドにベニと寝ていた。
 何をやっているのか見当もつかないのだが、桜あらいこ[#「桜あらいこ」に傍点]の空袋が沢山持ちこまれる事がある。
「私んとこのパパあんなにいつもニコニコ笑ってるけど、とても淋しいのよ、あんたお嫁さんになってくんない。」
「馬鹿ね! ベニさんは、私はあんなお爺さん大嫌いよ。」
「だってうちのパパ一人でおくのはもったいないって、若い女が一人でゴロゴロしている事は、とてもそんだ[#「そんだ」に傍点]ってさア。」
 三階建の此ガクガクの
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