位は離れている。
 犀の同人で、若い青年がはいって来た、名前を紹介されたが、秋声氏の声が小さかったので聞きとれなかった。
 金の話も結局駄目になって、後で這入て来た順子さんの華やかな笑声に押されて、青年と私と、秋声氏と順子さんと四人は外に出た。
「ね、先生! おしる粉でも食べましょうよ。」
 順子さんが夜会巻き風な髪に手をかざして秋声氏の細い肩に凭れて歩いている。私は鎖につながれた犬の感じがしないでもなかったが、非常に腹がすいていたし、甘いものへの私の食慾は、あさましく犬の感じにまでおちてしまった。
 誰かに甘えて、私もおしる粉を一緒に食べる人をさがすかな。四人は、燕楽軒の横の坂をおりて、梅園と云う、待合のようなおしる粉屋へはいる。黒い卓子について、つまみのしそ[#「しそ」に傍点]の実を噛むと、あゝ腹いっぱい茶づけが食べてみたいなと思った。

 しる粉屋を出ると、青年と別れて、私達三人は、小石川の紅梅亭に行く。賀々寿々の新内と、三好の酔っぱらいに一寸涙ぐましくなって、いゝ気持ちであった。
 少しばかりの金があれば、こんなにも楽しい思いが出来る。まさか紳士と淑女に連れそって来た私が、お茶
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