厭になった。
 人間の春秋《くらし》とは、かくまでも佗しいものか! ベンチに下駄をぶらさげたまゝ転がると、星があんまりまともに見えすぎる。
 星になった女!
 星から生れた女!
 頭がはっきりする事は、風が筒抜けで、馬鹿のように悲しくなる。
 夜更け。馬に追われた夢を見る。
 隣室の××頭痛し。

 二月×日
 朝から雪混りの雨。
 寝床で当にもならない原稿を書いていると、十子遊びに来る。
「私どこへも行く所なくなったのよ、二三日泊めてくれない?」
 羽根のもげたこおろぎ[#「こおろぎ」に傍点]のような彼女の姿体から、押花のような匂いをかいだ。
「お米も何もないのよ、それでよかったら何日でも泊っていらっしゃい。」
「カフェーの客って、みんなジユウ[#「ジユウ」に傍点]ね、××と鼻ばかり赤かくしていて、真実なんて爪の垢ほどもありゃアしないんだから……。」
「カフェーの客でなくたって、いま時は、物々交換でなくちゃ……せち辛いのよ。」
「あんなとこで働くの、体より神経の方が先に参いっちゃうわね。」
 十子は、帯を昆布巻きのようにクルクル巻くと、枕のかわりにして、私の裾に足を延ばして蒲団へもぐ
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