、急いで旅仕度をすると、旅費を借りに社へ行く。

 社長に電報みせて、五円の前借りを申し込むと、前借は絶体に駄目だと云う。だが私の働いた金は取ろうと思えば拾五円位ある筈だ。不安になって来る。廊下に置いたバスケットが妙に厭になった、大事な時間を、借りる! と云う事で、それも正当な権利を主張しているのに、駄目だと云う。
 これは、こんなところでみきわめ[#「みきわめ」に傍点]をつけた方がいゝかも知れない。
「じゃ借りません! 其代り止めますから今迄の報酬を戴きます。」
「自分で勝手に止されるのですから、社の方では、知りませんよ。満足に務めて下すっての報酬であって、まだ十二三日しかならないじゃありませんか!」

 黄にやけたバスケットをさげて、私は又、二階裏へかえった。
 ミシン嬢は、あれから、下の妻君と気持が凍って、引っ越しするつもりでいたらしかったが、帰えって見ると、どこかみつかったらしく、荷物を運び出していた。
 彼女の唯一の財産である、ミシンだけが、不格恰な姿で、荷車の上に乗っかっていた。
 全てはあゝ[#「あゝ」に傍点]空しである――。

 七月×日
 駅には、山や海の旅行者が、白
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