七月×日
青山の貿易店も高架線のかなた。二週間の労働賃金拾壱円也、東京での生活線なんてよく切れたがるものだなア。
隣りのシンガーミシンの生徒? さんが、歯をきざむように、ギイギイ……しっきりなしにミシンのペタルを押している。
毎日の生活断片をよく寝言にうったえる[#「うったえる」に傍点]秋田の娘さん。
古里から拾五円ずつ送金してもらって、あとはミシンでどうやら稼いでいる、縁遠そうな娘さん、いゝ人だ。
彼に紹介状もらって、××女性新聞社に行く。本郷の追分で降りて、ブリキの塀をくねくね曲ると、緑のペンキの脱落《はげ》た、おそろしく頭でっかち[#「でっかち」に傍点]な三階建の下宿屋の軒に、蛍程な社名が出ていた。
まるで心天《ところてん》を流すよりも安々と女記者になりすました私は、汚れた緑のペンキも最早何でもなく思った。
昼。
下宿の中食をもらって舌つゞみ打つと、女記者になって二三時間もたゝない私は、鉛筆と原稿紙をもらって談話取りだ。
四畳半に厖大な事務机が一ツ、薄色の眼鏡をかけた社長と、××女性新聞発行人の社員が一人、私を入れて三人の××女性新聞。チャチなものだ。又
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