を歩いていると、国へ帰りたくなった。目当《めあて》もないのにウロウロ東京で放浪したところで、結局どうにもならない。電車を見ていると死ぬる事を考える。

 本郷の前の家へ行く。叔母さんつめたし。
 近松氏から郵便来ている。出る時に、十二社の吉井勇さんのところに女中がいるから、ひょっとしたら、あんたを世話してあげると云う、先生の言葉だったが、薄ずみで書いた断り状だった。

 夕方新宿の街を歩いていると、妙に男の人にすがりたくなった。
 誰か助けてくれる人はないかなア……新宿駅の陸橋に紫色のシグナルがチカチカゆれているのを見ると、涙で瞼がふくらんで、子供のようにしゃっくり[#「しゃっくり」に傍点]が出た。

 当ってくだけてみよう――。
 宿の叔母さんに正直に話しする。仕事がみつかるまで、下で一緒にいていゝと云ってくれた。
「あんた、青バスの車掌さんにならないかね、いゝのになると七拾円位いはいるそうだが……。」
 どこかでハタハタ[#「ハタハタ」に傍点]でも焼いているのか、とても臭いにおいが流れて来る。七拾円もはいれば素的だ。ブラさがるところをこしらえなくては……。十燭の電気のついた帳場の炬
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