あげてもいゝけど、でも労働者はいたって朗らかだった。
私の前には、御飯にごった煮にお新香、まことに貧しき山海の珍味。合計拾弐銭也、のれんを出ると――どうもありがとう――お茶をたらふく呑んで、朝のあいさつをかわして、拾弐銭、どんづまりの世界は、光明と紙ひとえで、真に朗らかだ。
だが、あの四十近い労働者の事を思うと、これは又、拾銭玉一ツで、失望、どんぞこ、堕落との紙ひとえだ――。
お母さんだけでも東京へ来てくれゝば、何とか働きようもあるんだけど……沈むだけ沈んだ私は難破船、飛沫がかゝるどころではない、ザンブザンブ潮水を呑んで、結局私も昨夜の淫売婦と、そう変った考えも持っていやしない。
あの女は卅すぎていたかも知れない。私が男だったら、あのまゝ一直線にあの夜に溺れて今朝はあの女と、もう死ぬ話でもしていたか知れない。荷物を宿にあずけて、神田の職業紹介所に行く。
何と云う冷たいこうまんちきな女だろう、私は、どこへ行っても砂っ原のように亮々とした思いがするので、厭になってしまった。
お前さんに使ってもらうんじゃないんだよ。
おたんちん!
馬鹿野郎!
ひょっとこ!
そうくり返え
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