ウト・ハムスンだって、こんな行きがゝりは持たなかっただろう。刑事が去ると、私は伸々と手足を延ばして枕の下に入れてある財布をさわってみた。壱円六拾五銭残っている。
日がビュウビュウ風に吹かれているのが、歪んだ高い窓から見える。ピエロは高いところから飛びおりる事は上手だが、上って見せる芸当は容易じゃない。
だが何とかなるだろう。――。
三月×日
青梅街道の入口の飯屋へ行く。熱いお茶を呑んでいると、ドロドロに汚れた労働者が馳け込むように這入って来て、
「姉さん! 拾銭で何か食わしてくんないかな、拾銭玉一ツきりしかないんだよ。」
大声で正直に立っていると、十五六の小娘が、
「御飯に肉豆腐でいゝですか。」
労働者は急にニコニコしてバンコ[#「バンコ」に傍点]へ腰かけた。そして大きな丼の飯と、葱のはいった肉豆腐と汁碗を前にして、天真にたべている。
一食拾銭よりと書いてあるのに、十銭玉一ツきりの此労働者は、スナオ[#「スナオ」に傍点]に正直に、入口から念を押している。
涙ぐましい気持ちだった。
御飯の盛りが私のヨリ多いような気がしたけれど、あれで足りるかしら、足りなかったら出して
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