ダボダボあふれた。
腹がへっても[#「腹がへっても」に傍点]、ひもじゅうない[#「ひもじゅうない」に傍点]とかぶり[#「かぶり」に傍点]を振っている時じゃないんだ、明日から、今から飢えて行く私達なのだ。
あゝあの拾参円はとゞいたか知ら、東京が厭になった。早くお父さんがゆとり[#「ゆとり」に傍点]をつけてくれるといゝ。九州もいゝな四国もいゝな。
夜更け、母が鉛筆をなめなめお父さんにたより[#「たより」に傍点]を書いているのを見て、誰かこんな体でも買ってくれる人はないかと思ったりした。
五月×日
朝起きたらもう下駄が洗ってあった。
いとしいお母さん!
大久保百人町のゆりのや[#「ゆりのや」に傍点]と云う派出婦会に行く。
中年の女の人が二人店の間で縫いものをしていた。
人がたりなかったので、そこの主人は、デンピョウのようなものと地図を私にくれた。行く先は、薬学生の助手だと云う。
道を歩いている時が、一番ゆかいだ。五月の埃をあびて、新宿の陸橋をわたって、市電に乗ると、街の風景が、真に天下タイヘイ[#「タイヘイ」に傍点]にござ候と旗をたてゝいるようだ。此街を見ていると、何
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