脊をむけて食べていると、万年筆屋の姉さんが、
「そこにもある、こゝにもあると云う品物ではござりません。お手に取って御覧下さいまし。」
私はふっと塩ぱい涙がこぼれた。
母はやっと一息ついた今の生活が嬉しいのか、小声で時代色のついた昔の唄をうたっている。
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たったったっ田の中で……
[#ここで字下げ終わり]
九州へ行っている父さんさえこれでよくなったら、当分はお母さんの唄でないが、たったかたのた[#「たったかたのた」に傍点]だ。
四月×日
水の流れのような、薄いショールを街を歩く娘さん達がしている。一ツ欲しいな。洋品店の四月の窓飾りは、金と銀と桜の花だ。
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空に拡った桜の枝に
うっすらと血の色が染まると
ほら枝の先から花色の糸がさがって
情熱のくじびき
食えなくてボードビルに飛び込んで
裸で踊った踊り子があったとしても
それは桜の罪ではない。
ひとすじの情
ふたすじの義理
ランマンと咲いた青空の桜に
生きとし生ける
あらゆる女の
裸の唇を
するする奇妙な糸がたぐって行きます。
花が咲きたいんじゃなく
強権者が花を咲かせるのです
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