ンプロンは、世界最長のトンネルだけど一人のこうした当のない旅でのトンネルは、なぜかしんみりとした気持ちになる。
海へ行く事がおそろしくなった。
あの人の顔や、お母さんの思いが、私をいたわっている、海まで走る事がこわくなった。
三門で下車する。
ホタホタ灯がつきそめて、駅の前は、桑畑、チラリホラリ、藁屋根が目につく、私はバスケットをさげたまゝ、ぼんやり駅に立ちつくしてしまった。
「こゝに宿屋ありますか?」
「此の先の長者町までいらっしゃるとあります。」
私は日在浜を一直線に歩いていた。
十月の外房州の海は、黒々ともれ上って、海のおそろしいまでな情熱が私をコオフンさせてしまった。
只海と空と砂浜、それも暮れ初めている。自然である。なんと人間の力のちっぽけな事よ、遠くから、犬の吠える声がする。
かすりの伴天を着た娘が、一匹の黒犬を連れて、歌いながら急いで来た。
波がトンキョウに大きくしぶき[#「しぶき」に傍点]すると、犬はおびえたように、キリッと正しく首をもたげて、海へ向って吠えた。ヴォウ! ヴォウ!
遠雷のような海の音と、黒犬の唸り声は何か神秘な力を感ぜずにはいら
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