のに愕《おどろ》き、その言葉で歌った日本の詩に金鉱を掘りあてたようなほこり[#「ほこり」に傍点]を持ったのです。近年、ロマン主義だとか能動精神だとか行動主義だとか云われるようになったけれども、誰も彼も詩を探しているのではないだろうかと思ったりします。大切なものが忘れられているような気がします。
帰って来ても、相変らず孤独で、いずれのグループにも拠っていないのですが、こつこつやって、努力するしか仕方がないと思っています。
帰ってすぐ、私は詩へのあこがれから、自費出版の形式で『面影』と云う未熟な詩集を出しました。保高徳蔵《やすたかとくぞう》氏の友情で出せたのですが、百の自分の小説よりも愉しいのです。
頃日《けいじつ》、私はやっと雑文を書く世界から解放されましたが、随分この時代が長かっただけに、ここから抜け出すことが大変苦しかったのです、これから再出発して小説と詩に専念したいと思います。生意気な話だけれども、ツルゲーネフにしたって、イプセンにしたって、フィリップにしたって、犀星にしても春夫にしても沢山いい詩を発表しているのですから、小説のかたわら詩を書けることは、自分自身に大変勇気の出
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