ぎ」に傍点]の日のような煙った淡さで咲いていた。
堤を降りて、道を探しながら電車道の方へ行くと、洋服を着た子供たちが、京言葉で泥あそびをしていた。
電車の駅近くへ出ると、小料理屋の間に挟《はさ》まって、大石|内蔵之助《くらのすけ》の住んでいたと云う、写真や高札《こうさつ》を立てた家があった。黄昏《たそがれ》ちかくて、くたびれきっていたが私は這入《はい》ってみた。家の中は暗くていい気持ちではなかった。入口から等身大の義士人形がずらりと並んでいた。打ち入りに使った色々なものがてすり[#「てすり」に傍点]の向うに飾ってあったが、暗くて詳しく眼に写って来なかった。小砂利が家じゅう敷きつめてあって、地獄極楽を観に来たような感じだった。義士人形は古いせいか、顔の色が褪《あ》せて、指がかけていたり、鼻がこぼれていたりして、気味の悪い姿だった。
*
電車で宿へ帰ると、また風呂へ這入り、わたしは机の前に坐ってみたが、何となく落ちつかないで困ってしまった。明日の十二日は啄木《たくぼく》の記念日だと云うのだけれども、啄木が生れた日なのか亡くなった日なのか、それさえわたしは知らない。読む
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