田舎がえり
林芙美子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)凭《もた》れて

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大石|内蔵之助《くらのすけ》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「魚+予」、第4水準2−93−33]《かます》かなんか
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 東京駅のホームは学生たちでいっぱいだった。わたしの三等寝台も上は全部学生で女と云えば、わたしと並んだ寝台に娘さんが一人だった。トランクに凭《もた》れて泣いているような鼻のすすりかたをしている。わたしは疲れていたので、枕もとのカアテンを引いてすぐ横になったが、眼をつぶらないうちに頭のところのカアテンが開いてしまって、三階の寝台で新聞を拡げている音がしている。三階から下まで通しになった一つのカアテンなので、一人が眠くなって灯をさえぎりたくても、上の方で眠くない人がカアテンを開けると、寝た顔は何時《いつ》までも廊下の灯の方へ晒《さら》していなければならない。仕方がないので、ハンカチを顔へあてて眠ったが
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