そんな、デパート選出の柄にみとれている奥さんたちの足袋《たび》ときたら、うす汚れていて、下駄は乱暴なものだったりします。下駄と云えば表つきはきらいです。とくにこの頃のように流行《はや》る靴の型はどうも好きません。足袋は木綿でコハゼがきつい位なのが私にはあいます。絹の着物の場合はキャラコをはきますが木綿が一番はき心地がよくて好きです。
 昔、(よく昔の話を云いますが)ヒフ[#「ヒフ」に傍点]〔被風〕
と云うものが流行っていました。胸に房をつけて随分いいものだったと思います。あんなのがもう一度娘さんたちの間に流行ってくれないものでしょうか。メリンスとか銘仙《めいせん》のようなもので不断着《ふだんぎ》にヒフをつくって着るのは温かでいいだろうと考えます。私はいい着物について語るしかく[#「しかく」に傍点]を持ちませんが、不断着はよそぎ[#「よそぎ」に傍点]よりも、もっと考えてもいいと思います。筒袖《つつそで》の袖口を花のように絞って着せられていた頃もありましたが、洋服の合間には、そんなロマンチックな不断の着物もあっていいと思います。
 街を歩いていますと、この頃は初夏だから、みんな薄いショール
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