いいでしょうが、もっと、どうにかならぬものかと考えます。如何《いか》にも国粋主義のようですが、もっとシャッキリしたものに眼をつける娘さんたちがないのを残念に思います。趣味をもっと優しく内気にしてほしいと思います。この間、ある百貨店へ木綿を一反《いったん》買いに参りましたが、木綿のいいのが少しも見当らないのでガッカリしました。木綿で拾円もするようなのはなくなってしまったのでしょう。呉服部のところを歩いていますとまるで博覧会へ行ったようなケンランさで、飛びつくような柄《がら》がすこしもないのです。年齢のせいばかりとは云えないほど、色々な呉服ものの染の悪さに、今さら変ったものだなと愕《おどろ》いてしまいました。おなじ紅色にしても、昔の紅色は奥行きがあったように思います。世の中が進歩しているはずなのに、柄模様ときたら、よくもあれだけセツレツに出来たものだと愕くほどでした。――先日も座談会で山脇敏子《やまわきとしこ》さんが話されたように、いまの絹物にはのり[#「のり」に傍点]の多い地《じ》へゴム印を押したような模様が多いのです。立ちどまってみているひとを見ますと、どこがいいのかしらと思う位です。
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