つて暮らさう。
皆そうして飛びだしてくれ!
そうして石を運んでくれ
そして私を胴上げして
石の城の上にのせてくれ。
さあ男とも別れだ泣かないぞ!
しつかり しつかり
旗を振つてくれ
貧乏な女王様のお帰りだ。
[#改ページ]
生胆取り
※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]の生胆に花火が散つて夜が来た
東西!
東西!
そろそろ男との大詰が近かづいて来た
一刀両断にたちわつた
男の腸に
メダカがピンピン泳いでゐる。
くさい くさい夜だ
誰も居なければ泥棒にはいりますぞ!
私はビンボウ故
男も逃げて行きました
まつくらい頬かむりの夜だ。
[#改ページ]
一人旅
風が鳴る白い空だ
冬のステキに冷たい海だ
狂人だつてキリキリ舞ひをして
目の覚めさうな大海原だ
四国まで一本筋の航路だ
毛布が二十銭お菓子が十銭
三等客室はくたばかりかけたどぜう鍋のやうに
ものすごいフツトウだ
しぶきだ
雨のやうなしぶきだ
みはるかす白い空を眺め
十一銭在中の財布を握つてゐた。
あゝバツトでも吸ひたい
ウヲオ! と叫んでも
風が吹き消して行くよ
白い大空に
私に酢を呑ませた男の顔が
あんな
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