円よ
あゝ狂人になりそうなの
一月せつせと働いても
海鼠のやうに私の主人はインケンなんです。
煙草を吸ふやうな気持ちで接吻でもしてみたい
恋人なんていらないの
たつた一月でいゝから
平和に白い御飯がたべたいね
わたしの母さんはレウマチで
わたしはチカメだけど
酒は頭に悪いのよ――
五十銭づゝ母さんへ送つてゐたけど
今はその男とも別れて
私は目がまひそうなんです
五十銭と三十五円!
天から降つてこないかなあ――
[#改ページ]
恋は胸三寸のうち
処女何と遠い思ひ出であらふ……
男の情を知りつくして
この汚らはしい静脈に蛙が泳いでゐる。
こんなに広い原つぱがあるが
貴方は真実の花をどこに咲かせると云ふのです
きまぐれ娘はいつも飛行機を見てゐますよ
真実のない男と女が千万人よつたつて
戦争は当分お休みですわ。
七面鳥と狸!
何だイ! 地球飛んじまえ
真実と真実の火花をやう散らさない男と女は
パンパンとまつぷたつに割れつちまへ!
[#改ページ]
女王様のおかへり
男とも別れだ!
私の胸で子供達が赤い旗を振る
そんなによろこんでくれるか
もう私はどこへも行かず
皆と旗を振
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