うだ。
三番目。
私の番に五人連のトルコ人がはいって来た。ビールを一ダース持って来させると、順々に抜いてカンパイしてゆくあざやかな呑みぶりである。白い風呂敷包みの中から、まるでトランクのように大きい風琴《ふうきん》を出すと、風琴の紐《ひも》を肩にかけて鳴らし出す。秋の山の風でも聞いているような、風琴の音色、皆珍らしがってみていた。ボクノヨブコエワスレタカ。何だと思ったらかごの鳥の唄だった。帽子の下に、もう一つトルコ帽をかぶって、仲々意気な姿だった。
「ニカイ アガリマショウ。」
若いトルコ人が私をひざに抱くと、二階をさかんに指差している。
「ニカイノ アルトコロコノヨコチョウデス。」
「ヨコチョウ? ワカラナイ。」
私達を淫売婦とでもまちがえているらしい。
「ワタシタチ トケイヤ。」
若いのが遠い国で写したのか、珍らしい樹の下で写した小さい写真を一枚ずつくれるなり。
「ニカイ アガリマショウ、ワタシ アヤシクナイ。」
「ニカイアリマセン。ミンナ カヨイデス。」
「ニカイ アリマセン?」
またビール一ダースの追加、一人がコールドビーフを註文《ちゅうもん》すると、お由さんが気に
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