入っていたのか、何かしきりに皿を指さしている。
「困ったわ、私英語なんか知らないんですもの、ゆみちゃん何を言ってんのか聞いてみてよ……」
「あの、飛行機屋さんにおききなさいよ、知ってるかも知れないわ。」
「冗談じゃない、発音がちがうから判らないよ。」
「あら飛行機屋さんにも判らないの、困っちゃうわね。」
「ソースじゃなさそうね。」
何だか辛子《からし》のようにも思えるんだけれど、生憎《あいにく》、からしかと訊《き》く事を知らない私は、
「エロウ・パウダ?」
顔から火の出る思いで聞いてみた。
「オオエス! エス!」
辛子をキュウキュウこねて持って行くと、みんな手の指を鳴らして喜んでいた。
自称飛行家はコソコソ帰っていった。
「トルコの天子さん何て言うの?」
時ちゃんが、エロウ・パウダ氏にもたれて聞いている。
「テンシサンなんて判るもんですか。」
「そう、私はこの人好きだけど通じなきゃ仕方がないわ。」
酒がまわったのか、風琴は遠い郷愁を鳴らしている。ニカイ アガリマショウの男は、盛んに私にウインクしていた。日本人とよく似た人種だと思う、トルコってどんなところだろう。私は笑いなが
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