だ。皆、これが嘘だったのかしらとおもう。ゆすぶられるような激しい風が吹く。詮ずれば、仏ならねどみな寂し。
(三月×日)
花屋の菜の花の金色が、硝子《ガラス》窓から、広い田舎の野原を思い出させてくれた。その花屋の横を折れると、産園××とペンキの板がかかっていた。何度も思いあきらめて、結局は産婆にでもなってしまおうと思って、たずねて来た千駄木町の××産園。歪んだ格子を開けると玄関の三畳に、三人ばかりも女が、炬燵《こたつ》にゴロゴロしていた。
「何なの……」
「新聞を見て来たんですけども……助手見習入用ってありましたでしょう。」
「こんなにせまいのに、ここではまだ助手を置くつもりかしら……」
二階の物干には、枯れたおしめが半開きの雨戸にバッタンバッタン当っていた。
「ここは女ばかりてすから、遠慮はないんですのよ、私が方々へ出ますから、事務を取って戴けばいいんです。」
このみすぼらしい産園の主人にしては美しすぎる女が、私に熱い紅茶をすすめてくれた。階下の女達が、主人と言ったのがこの女のひとなのだろうか……高価な香水の匂いが流れていて、二階のこの四畳半だけは、ぜいたくな道具がそろってい
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