と、しなびた手でお婆さんは私の手をはらいのけた。
「ぜぜなぞほっときや。」
このお婆さんにいくつ[#「いくつ」に傍点]ですと聞くと、七十六だと云っていた。虫の食ったおヒナ様のようにしおらしい。
「東京はもう地震はなおりましたかいな。」
歯のないお婆さんはきんちゃく[#「きんちゃく」に傍点]をしぼったような口をして、優しい表情をする。
「お婆さんお上りなさいな。」
私がバスケットからお弁当を出すと、お婆さんはニコニコして、口をふくらまして私の玉子焼を食べた。
「お婆さん、暑うおまんなあ。」
お婆さんの友達らしく、腰のしゃんとしたみすぼらしい老婆が店の前にしゃがむと、
「お婆はん、何ぞええ、仕事ありまへんやろかな、でもな、あんまりぶらぶらしてますよって会長はんも、ええ顔しやはらへんのでなあ、なんぞ思うてまんねえ……」
「そうやなあ、栄町の宿屋はんやけど、蒲団の洗濯があるというてましたけんど、なんぼう二十銭も出すやろか……」
「そりゃええなあ、二枚洗うてもわて[#「わて」に傍点]食えますがな……」
こだわりのない二人のお婆さんを見ていると、こんなところにもこんな世界があるのかと、淋
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