窃盗十五人、詐欺一人、殺人六人、嬰児殺し三人、堕胎《だたい》一人、放火九人、贓物《ぞうぶつ》収受一人、文書偽造一人。
七十歳未満では、窃盗四人、殺人一人、嬰児殺し一人、放火三人、賭博一人、兌換券偽造一人。
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 こんなふうな統計ですけれど、十八歳から二十歳前後には、案外に犯罪がすくなくて、年をとるほど、生活的な犯罪が多くなっていっています。おもしろいことには、月経と犯罪と云う統計のなかには非月経の時の犯罪が案外多いのでした。平時の折の犯罪が八七とすると、月経時の犯罪が二一の割合です。
 独房を見てから、わたしは講堂のようなところをみせて貰いましたが、ここは広い畳敷きの部屋で、オルガンが置いてあり、教壇の後には金色《こんじき》まぶしい仏壇が安置してありました。部屋の窓々から、明るい正午の陽の光が射しこんでいて、ここはまるで小学校の裁縫教室のようなところでした。ここでは訓話をきいたり、少年囚の学課の教室にもなるのだとうかがいました。
 さすが女囚の刑務所だけあって、古い建物でしたけれど、四囲《あたり》は清潔な感じです。洗面所には、よく製糸工場でみるような細い長い鏡が
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