横に張りつけてあって、窓の外に明るい庭がみえています。広い、道場のような工場の中には、赤い着物を着たひとだの、青い着物のひとだの、濃い縞《しま》の着物を着ているひとだのが、カアキ色のエプロンをして色々な作業についていました。
織り物をするところでは、輸出向きのタフタのようなものを、動力をつかった沢山の機《はた》で織っているのですが、ここは千紫万紅《せんしばんこう》色とりどりに美しい布の洪水《こうずい》です。わたしたちのパラソルにいいような、黄と青と黒の派手なチェック模様や、真夏の海辺に着たいような赤とブルウの大名縞《だいみょうじま》、そんな人絹《じんけん》のタフタが沢山出来ているそばでは地味な村山大島が、織られていたり、畳を敷いたところでは、娘やおばあさんたちが、派手な着物を縫っていたりしました。請負《うけお》い仕事なのでしょうが、とにかく、忙しく仕事をしている間と云うものは、この人たちの上に、何の暗さもかぶさっては来ないだろうとおもわれます。黒い上っぱりを着た若い女看守のひとが各部屋に一人ずつつきそっているようでした。虫|除《よ》けの薬をいれる、ホドヂンと云うセロファンの薬の袋を貼
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