女囚だけの刑務所は、この栃木のと丹後《たんご》の宮津にあるのが有名だそうです。栃木の刑務所には、諸所から来るらしく、女囚の表情や骨格にも、様々な地方色が窺《うかが》えるのでした。性質と犯罪の統計には、狡猾《こうかつ》と云うのが四十二人もあり、怠惰《たいだ》と云うのがたった一人しかありません。温和と云うのが十八人、残忍と云うのが十人、概念的な統計かも知れませんが、女の狡猾と云うのは、ちょっといやな気持ちがします。また、入所時に於ける、教育程度も、高等教育を受けたものはたった一人位で、あとは無筆者が五十三人の多数です。普通教育を受けたものが六十八人、受けないものが六十三人、中等教育を受けた者が八人位だそうです。
教育のないひとたちの犯罪が如何《いか》に多いかと云うことがよくわかりますけれど、このひとたちの犯罪も、全く、善悪|紙一重《かみひとえ》のふんぎり[#「ふんぎり」に傍点]が利《き》かなかった、ほんのささやかな、くだらないところに、ここへ来る経路が生れたのではないかとおもわれます。
よく、三面記事のなかに、奉公が厭《いや》だから放火したとか、友達が、自分よりいい着物をきているから人
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