のものを盗んだとか、くだらない女の罪がよくあるものです。
女性の知性と云うものは、何等《なんら》の膨脹力もなく、男のように根深い力の坐った生活力も、大概《たいがい》は落着のないものだったり、だから、犯罪の動機が、それぞれくだらない感情の発作でおきたようなものばかりじゃないかとおもわれたりします。
この刑務所は幸福なことに、たいへん明るい庭を持っているし、陽当りのいい窓も沢山持っています。十四,五人も雑居している広い畳敷きの部屋には、青い蒲団が積み重ねてありましたし、部屋の隅には水を入れる大きな壺《つぼ》だの、柄杓《ひしゃく》だの、本をのせる小さい戸棚なんかが置いてありました。雨の日は広い廊下で、ラヂオにあわせて体操をするのだそうです。天気のいい日は倉庫の裏の空地で体操をするのだそうですが、空地の向うには女囚のつくる野菜畑もつくってありました。野菜畑へ出ると、寺の屋根や、よその庭の桜の花もこのひとたちの眼を慰めてくれることでしょう。
この建物のなかには、小さい床《とこ》の間《ま》を持った部屋があって、時々少年囚に、礼儀作法や活花《いけばな》をここで教えられるのだそうです。少年囚と云
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