した灰の色と、この建物は、何だか淋しい対照をみせていました。中庭の柵のなかには、赤ちゃんのおしめが沢山干してあります。さっき独房で、ひとりでのし[#「のし」に傍点]をつくっていた女のひとのかしらと、わたしはその派手な浴衣《ゆかた》のおしめの柄《がら》を一つ一つ眺めていました。
ここの女囚のひとたちのお風呂場をわたしはみせて貰いましたけれど、これは、石の広い土間の真中に、腰高な矩形《くけい》の浴槽があって、それに背中あわせに三人ずつ、這入るのだそうです。何だか、寺の風呂のようなところでした。ささやかな憩《いこ》いの場所なのですが、こことても時間にきめられて這入るので、世間の風呂好きの女のように勝手にふるまうわけにはゆかないでしょう。務めぶりのよいひとだったら、風呂へ這入れる率も多いのだそうです。わたしは、ここに働いているひとたちをみて、何だかこの償いが済んだら、もう再び罪を犯すようなひとはいないだろうとおもいました。どのひとの顔も将来を愉しみに働いている様子にみえます。ここでは十二時間の勤労だそうですが、勿論《もちろん》働いただけの賃金は、出所する時に貰えるわけです。
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